孫子の兵法、軍争篇の五
衆を用いるの法。
軍政(グンセイ)ニ曰ク、言エドモ相聞エズ、故ニ金鼓(キンコ)ヲツクル。視(シメ)セドモ相見エズ、
故ニ旌旗(セイキ)ヲツクル、ト。ソレ金鼓、旌旗ハ人ノ耳目(ジモク)ヲ一ニスル所以(ユエン)ナリ。
人スデニ専一(センイツ)ナレバ、則チ勇者(ユウジャ)モ独リ進ムコトヲ得ズ、怯者(キョウジャ)モ
独リ退クコトヲ得ズ。コレ衆ヲ用(モチ)ウルノ法ナリ。故ニ夜戦ニ火鼓(カコ)多ク昼戦(チュウセン)ニ
旌旗(セイキ)多キハ、人ノ耳目(ジモク)ヲ変ウル所以ナリ。
古代の兵書に、
「口で号令をかけるだけでは聞き取れないので、金鼓を使用する。手で指図するだけでは見分けることができないので、旌旗(せいき)を使用する」とある。
金鼓や旌旗は、兵士の耳目を一つにするためのものである。これで兵士を統率すれば、勇猛なものでも独断で抜け駆けすることができずず、臆病な者でも勝手に逃げ出すことができない。これが大軍を動かす秘訣である。
とくに、夜戦ではかがり火と太鼓をふやし、昼戦では旌旗を多用して、部隊間の連絡を密にしまければならない。
※金鼓:太鼓や鐘の鳴り物 旌旗:のぼりと旗
組織において情報の伝達は重要である。
特に「時間」は大切である。
「朝礼暮改」というが、これが成立するには条件がある。
朝、指示した命令が夕暮れまでに組織の末端にまで伝達されていなければならない。
伝達されるまでに新たな指令を出せば組織の中に異なる命令が存在することになる。
そうなれば組織は混乱してしまう。
金鼓や旌旗は素早い伝達を目的としているのだろう。
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