故ニ戦イノ地ヲ知リ、戦イノ日ヲ知レバ、則チ千里ニシテ会戦スベシ。戦イノ地ヲ知ラズ、戦イノ日ヲ知ラザレバ、則チ左、右ヲ救ウ能(アタ)ワズ、右、左ヲ救ウ能ワズ、前、後ヲ救ウ能ワズ、後、前ヲ救ウ能ワズ。
而ルヲ況(イワ)ンヤ遠キハ数十里、近キハ数里ナルヲヤ。吾ヲ以ッテコレヲ度(ハカ)ルニ、越人(エツヒト)ノ兵多シトイエドモ、マタ奚(ナン)ゾ勝敗ニ益センヤ。故ニ曰ク、勝ハ為スベキナリ。敵衆(オオ)シトイエドモ、闘(タタカ)ウコトナカラシムベシ。
したがって、戦うべき場所、戦うべき日時を予測できるならば、たとえ千里も先に遠征したとしても、戦いの主導権をにぎることができる。逆に、戦うべき場所、戦うべき日時を予測できなければ、左翼の軍は右翼の軍を、右翼の軍は左翼の軍を救援することができず、前衛と後衛でさえも協力しあうことができない。まして、数理も数十里も離れて戦う友軍を救援できないのは、当然である。
わたしが考えるに、敵国越(えつ)の軍がいかに多かろうと、それだけでは勝敗を決定する要因とはなりえない。なぜなら、勝利の条件は人がつくり出すものであり、敵の軍がいかに多かろうと、戦えないようにしてしまうことができるからだ。
ランチェスターの第一法則、「一騎討ちの法則」と同類である。
刀・槍の局地戦では一人の兵士は一度に一人の敵しか相手にできない。
20人対10人の戦いでは、10人を全滅させるには味方も10人倒され10人しか残らない。
ランチェスターの有名な第二法則は、近代兵器(機関銃や大砲など)を使った広域での戦闘は
双方の戦力比は初期戦力の自乗になるという強者の理論である。
孫子はたとえ敵の兵力に劣っていたとしても弱者の理論を駆使し敵を破ることも不可能ではないと説いているのである。