九変篇の5は、
必死は殺され、必生は虜(トリコ)にさる
故ニ将ニ五危(ゴキ)有リ。必死ハ殺サルベキナリ、必生ハ虜(トリコ)ニサルベキナリ、忿速(フンソク)ハ
侮(アナド)ラルベキナリ、廉潔(レンケツ)ハ辱(ハズカ)シメラルベキナリ、愛民ハ煩(ワズラワ)サルベキナリ。
オオヨソコノ五者ハ将ノ過(アヤマ)チナリ、兵ヲ用ウルノ災(ワザワ)イナリ。軍ヲ覆(クツガエ)シ将ヲ殺ス
ハ必ズ五危ヲ以ッテス。察セザルベカラズ。
将帥には、陥りやすい五つの危険がある。
その一は、いたずらに必死になることである。これでは、討ち死にをとげるのがおちだ。
そのニは、なんとか助かろうとあがくことである。これでは、捕虜になるのがおちだ。
その三は、短期で怒りっぽいことである。これでは、みすみす敵の術中にはまってし
まう。
その四は、清廉潔白である。これでは、敵の挑発に乗ってしまう。
その五は、民衆への思いやりを持ちすぎることである。これでは、神経がまいってし
まう。
以上の五項目は、将帥の陥りやすい危険であり、戦争遂行のさまたげとなるもの
だ。軍を壊滅させ、将帥を死に追いやるのは、必ずこの五つの危険である。十分に考慮
しなければならない。
あまり一つの事に固執するのではなく臨機応変に対処すべきということだろうか。
必死になることで他の道がみえなくなる。清廉潔白過ぎては「兵は詭道(キドウ)なり」
で騙し合いに勝てない。
過ぎたるは及ばざるが如しなのだ。