軍争篇の七
窮寇(きゅうこう)には迫ることなかれ
故ニ兵ヲ用イルノ法ハ、高陵(コウリョウ)ニハ向カウコトナカレ、丘ヲ背ニスルニハ逆
(ムカ)ウコトナカレ、佯(イユワリ)北(ニ)グルニハ従ウコトナカレ、鋭卒ニハ攻ムルコトナカレ、
餌兵(ジヘイ)ニハ食ラウコトナカレ、帰師(キシ)ニハ遏(トド)ムルコトナカレ、囲師(イシ)ニハ
必ズ闕(カ)キ、窮寇(キュウコウ)ニハ迫(セマ)ルコトナカレ。コレヲ兵ヲ用ウルノ法ナリ。
(解説~守屋洋・孫子の兵法より)
したがって、戦闘にさいしては次の原則を守らなければならない。
1.高地に布陣した敵を攻撃してはならない。
2.丘を背にした敵を攻撃してはならない。
3.わざと逃げる敵を追撃してはならない。
4.戦意旺盛な敵を攻撃してはならない。
5.おとりの敵兵にとびついてはならない。
6.帰国途上の敵のまえにたちふさがってはならない。
7.敵を包囲したら必ず逃げ道を開けておかなければならない。
8.窮地に追いこんだ敵に攻撃をしかけてはならない。
これが戦闘の原則である。
孫子の偉大さは人間に対する洞察力の深さだと感じる。
土壇場に敵を追い込めば「窮鼠猫を咬む」のことわざのごとく手痛い反撃を受ける可能性がある。
逆に見方をこのような状況にすれば「火事場のくそ力」も発揮できるのである。
とにかく孫子は、「兵」はあくまで「駒」としか見ていないようだ。
よって孫子の読み方もいく通りにも読み解ける。
多くの武将や将軍が孫子をバイブルとして戦っても勝敗が分かれる理由と長く読み伝えられている要因なのだろう。