兵勢篇の最後は
「勢に求めて人に求めず」 故ニ善ク戦ウ者ハ、コレヲ勢(セイ)に求メテ、人ニ責メズ。故ニヨク人ヲ択(ス)テテ勢ニ任ズ。
勢ニ任ズル者ハ、ソノ人ヲ戦ワシムルヤ木石ヲ転ズルガゴトシ。
木石ノ性、安ナレバ則(スナワ)チ静ニ、危ナレバ則チ動キ、方ナレバ則チ止マリ、円ナレバ則チ行ク。故ニ善ク人ヲ戦ワシムルノ勢イ、円石ヲ千仭(ジン)ノ山ニ転ズルガゴトキハ、勢ナリ。
したがって戦上手は、なによりもまず勢いに乗ることを重視し、一人ひとりの働きに過度の期待をかけない。それゆえ、全軍の力を一つにまとめて勢いに乗ることができるのである。
勢いに乗れば、兵士は、坂道を転がる丸太や石のように、思いがけない力を発揮する。
丸太や石は、平坦な場所では静止しているが、坂道におけば自然に動き出す。
また、四角なものは静止しているが、丸いものは転がる。
勢いに乗って戦うとは、丸い石を千尋仭の谷底に転がすようなものだ。これが、戦いの勢いと言うものである。
しばしば経営の書として経営者に読まれている孫子であるが、孫子はここにもあるように個々の能力に期待をかけていないように受け取ることができる。
「始計篇のニ」にあるように戦力の検討は「道」「天」「地」「将」「法」の五つである。
戦力の分析は
始計篇の三にあるように「君主の政治」「将軍の能力」「法令の整備」「
軍隊の精強」「兵卒の訓練」「公正な賞罰」である。
よって企業の力も社員の個々の能力よりも将であり君主である「社長が全て」などと誤解されてしまう恐れもあろう。
確かに個々の能力開発は個人の責任に因るものであろうがやる気を起こさせる環境整備と訓練の機会を用意することまで否定はしていないのだから。
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